東京高等裁判所 昭和41年(く)130号 決定 1966年9月20日
少年 S・S(昭二五・一・二九生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣旨は、少年本人の差し出した抗告申立書に記載してあるとおりであるから、これを引用し、これに対して次のとおり判断する。
所論は、原決定に処分の著しい不当があり、本件を刑事処分として検察官に送致されたいというのであるが、一件記録を精査し、これに現われた本件非行の罪質、態様、動機、少年の年齢(満一六歳にすぎないこと)、性行、経歴、家庭の事情、生活環境、非行後の情況、本件非行の社会的影響など諸般の情状を綜合考察し、殊に少年が未だ一六歳の年少であり、昭和四一年四月一九日赤城少年院(初等少年院)を仮退院して間もなく本件非行に及んだこと、実父は、現在、中風症で臥床し、実母は少年に対し甘く放任的であり、いずれも少年を監督する能力がないことなどを斟酌すれば、少年に対しては中等少年院に収容して健全な社会性および勤労意欲を促進させるように教育する必要があると思料するので、原決定の処分は相当であり、著しく不当ではないから、論旨は採用しえない。
よつて本件抗告は理由がないから少年法三三条一項、少年審判規則五〇条によりこれを棄却し、主文のように決定をする。
(裁判長判事 白河六郎 判事 河本文夫 判事 藤野英一)
参考二
抗告の理由
私は赤城少年院を四月一九日に仮退院しました。赤城少年院に入院する前に入つていた暴力団○○組からも足を洗つて、これから真面目にやろうと思い長男の兄がやつている解体業を手助けして東京で働らいていました。その内に長男の兄が警察に入つてしまい次男の兄が仕事をついでやつており、まもなく仕事の現場が多くなり私も現場をもらう事になり、人夫を集めに小山市に帰つたところ、今度の事件をおこしました。事件は傷害・暴行・刀剣不法所持などですが、この暴行の件は警察に行く前に被害者に私があやまり示談になつており、警察に行つても被害者はこの事を示談にしたことだからと言つて告訴してないのに私に刑事さんがいちおう聞いておくからと言うので話しましたところ、暴行として書類に出されました。警察に逮捕されてから毎日反省しました。今度の事件は相手も悪いです。私は暴力をふるつたのと日本刀を持つた事がいけませんでした。私は毎日反省しました。そして傷害の方も示談にしてもらうよう連絡しましたが家の方もいそがしくて審判の時までに出来ませんでした。審判の時になつて判事さんがこの事件は刑事処分にしたらそうとうの事件だから真面目にやるといつても勘弁できる事ではないと言い不服があれば抗告しなさいと言いました。私は本当に真面目にやるとたのんだのに真面目にやるにしても、この事件はそうとうの事件だから勘弁出来ないと言われ、中等少年院に行つてもらうと言われたのです。調査官が来た時少年は事件にあまり関係しなく本人が悪い事をしたという反省の気持があるか無いかなのだと言つておいて審判の時になつて裁判官は刑事処分にしてもそうとうの事件だからというのです。私はそれなら少年院など入れずに刑事処分にすればよいと思いました。真面目にやろうと思つているのに少年院に入るなら刑罰として刑事処分にしてもらいたいと思います。今度の事件は私が手を出さなけれぱ相手が悪い。私が手出しをしたから私が悪くなつたのです。なにが悪かつたかよく反省しバカな事は二度としまいと思つて真面目にやろうと思つているのに少年院に送らなくてもほかの処分があると思います。刑罰の意味で入れるのなら刑事処分にしてもらいたかつたのです。